メネラウスモルフォ

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アートアクアリウム2018」に見た、インスタ映えに取り憑かれた日本人の姿

【この記事は2018年8月30日の他ブログ記事を引っ越しして再編集したものです】

 

 

去年、東京で開催されているのをテレビで観て、ずっと気になっていた「アートアクアリウム2018 名古屋」に行ってみました。

 

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アートアクアリウムとは、アーティスト木村英智氏がプロデュースする幻想的な水中アート展覧会。金魚と最新技術のアクリル水槽、光やプロジェクションマッピングを用いて幻想的な世界を演出する展示会。
2007年に初めて開催され、毎年日本各地を転々としていて今年で10週年だそうです。


かなり混んでるのを覚悟して行きましたが、平日ど真ん中15時過ぎって事もあってか、比較的空いていました。土日は入場制限する事もあるそうです。


展示は写真撮影OKで動画は不可。
会場が繁華街のデパートだからか、20代~30代くらいの女性とその連れの男性って感じが多かったです。


会場内は暗く、ネオン街のような怪しい色使いに、音量デカめのクラブっぽいズンズンしたBGMが流れています。花魁文化が現代なったらこんなイメージなのだろうか…??
しっとり水流のBGMが流れているのかと思っていたのでこのパンチ力は意外でした。
「金魚の展示だから…!!アートだからっ…!!」という免罪符を得た、電子ドラッグのような印象を受けました(笑)


そして何より、誰も、作品など見ていないのだ。
9割5分以上の人、と言ってもいいくらい殆どの人が、作品を自分自身の目よりカメラのレンズ越しで見ている時間の方が長い。
作品の前に行って「わー!綺麗!」と言った1秒後にはスマホのカメラを構え、シャッターを切り終わった瞬間にその作品への興味を無くす。
スマホを下ろした後に、生きている金魚が完成された水槽の中で、揺らめいている姿を実際に自分の目に焼き付けることはしない。またすぐに数歩歩いて次の作品の前に行き、即座にスマホを構え、そして一瞬で興味を無くし次の作品へ…その繰り返し。


多くの若い男女が、作品を自分の目で見ずにカメラにだけ収めて満足していく様子は実に珍妙だった。

 

 

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素人の自分が撮影してもホラッ、それなりのわびさび。

 

 

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作品自体はどれも美しい。

 

 

これが「アートアクアリウム展」の真意なのだと思う。
金魚をアートとして見てもらう事が目的ではない、「写真を撮ってSNSで拡散してもらい、次回の開催も成功させる(利益をあげる)」事が目的なのだ。
現代アートを用いたビジネスモデルの成功例がここにある。
作者が一つ一つの作品に、昨今のインスタ映えに取り憑かれた人々への皮肉を込めているとしたら、これはもう大成功だと思う。


実際に、失礼を承知で言うが、一つ一つの作品にメッセージ性はほぼ感じない。
ただただ誰にでも分かりやすく綺麗なのだ。
そして面白い事に、全ての作品が素人がどの角度から撮っても、それなりに美しく映るように完璧に設計されている。
大人がスマホを自然に構えた高さに作品があり、混雑していてもどの角度からも撮れるよう、円形や壁際45度の作品が殆ど。横に大き過ぎる作品もなく、アスペクト比や光の加減も計算し尽くされていると感じた。
まさに「撮って拡散してもらう為の展示」。


会場に子供連れも数組見かけたのだが、
最初の方こそ子供は「金魚だー!かわいい!」とはしゃいでいるのだが、終盤になるとつまらなそうにどの子も黙ってしまっている(笑)
そりゃそうだ。たくさんの金魚が見れると来たはいいが、ネオン街みたいな妖艶な色使いに音量大きめのクラブミュージックが流れた暗い会場。子供の目線からは高さが合わない作品も多く、親はスマホで撮ることに夢中。そりゃ飽きるだろう、という感じだった。


アートアクアリウムを見た後に、(アートアクアリウムの半券を持って行くと入場料が割引されるので)、別のデパートで開催されている「ざんねんないきもの展」も行ってみたのたが、正直こちらの方が面白かった。

ー進化に正解はありません
  生き残れるかどうかは、もはや運なのですー

シンプルながら強烈なメッセージでした。
子供に是非見たせい展示でしたね(子供いないけど)

 

さて、アートアクアリウムの話に戻りますが、
散々批評してしまいましたが、自分は昨今のインスタ文化を否定するつもりは勿論ないです。個人が手軽に「自分が良い・美しい」と思った物を発信できるようになったのはとても良い事だと思います。
ただ「お酒は飲んでも飲まれるな」と同じように、ツールに飲み込まれてツールに利用されていけないと思う。
アートアクアリウムは分かりやすい美の形と、インスタ映えへの皮肉が込められている(もう少し続きそうな)ビジネスだと感じました。